06 サンちゃんはファッション大好き
麻布十番キャット三銃士~第6回
一人でジムを出たサンドリヨンはファッションを見つけに十番のお店を回りました、ある素敵なブティックに入って洋服を見ていると、周りの人たちの視線が一堂に集まりました。ファッションを考えているサンドリヨンからは、あまりにも凄いモデルオーラが発されていて、その魅力的な力に吸い込まれてしまったのです。
サンドリヨンはファッションモードになると特殊なモデルオーラが出てきて周りの人たちを魅了してしまうのです。
たまたまきていたブランドのファッションデザイナーが思わず声をかけました。
「お嬢さん、いやお名前は存じませんが多分どこかに属しているプロのモデルの方とお見受けします」
「私の名前はサンドリヨンです、それからプロとかモデルとかではなくて照り焼きが好きなの」
「テリヤキですか、テリヤキ・・・? あっそうかあのスーパーデザイナーのテリー・ヤキのことですね。ちょっと勉強不足でして申し訳ありませんでした。まさかヤキの専属モデルではないのでよすね」
「流石に千足は持ってないです」
「サンドリヨン様、単刀直入に申し上げますが、うちのブランドの専属になっていただけないでしょうか。私はこのブランド「ツーク」のデザイナーでCEOの者です」
「私、つくねも好きですけど」
「ツークを気に入っていただいて嬉しい限りです。あなた様にこのブランド「29」これをツーと9でツークなんですが、専属モデルをお願いしたいと思います。貴方の美貌と抜群のスタイル、他には類を見ない身のこなし。おまけにトークまで神秘的です」
「あなた名前はあるのかしら、私はサンドリヨンよ」
「もちろんあります、サンドリヨン様。私はピエール青山と申します」
「ビニールさん。あなたがファッションの人ならいいのに。照り焼きは好きかしら」
「テリー・ヤキですね、もちろん彼のセンスには敬服しています」
ピエール青山と名乗る人物は汗をかきながら言いました。
「千足も買ってもいいかはマムに聞いてみないと分からないから、後で携帯まで連絡ちょうだい」
「専属のモデルということはうちのブランドだけでモデルをお願いしたいということなのです。どうぞよろしくマネージャーのマム様にはお伝えください」
「じゃあ、今日はこれと、これとこれを持って行っていいかしら。また明日も来るから、その時はこれとこれを持っていきます」
サンドリヨンは服を手に取るとすまして言いました。
「知」と「美」と「力」の三銃士
三人は家に帰ってくるとひょうこ先生に今日1日にあったことを報告しました。
「マム、僕はね、専属になったんだよ」
「まあパンプキン、あなたはなにの専属になったの」
「スポーツジムだよ。イメージ・キャラクターになったんだよ」
「マム、パンちゃんは壁を登るのが得意なのでボルダリングのジムで専属キャラとして働くことになったの、私がマネージャーするんだけど」
ファッジが説明します。
「マム、私も千足の靴になるのよ、ビニール青山という人がなってほしいって頼むの」
「人間になって間もないのに、二人とも随分活躍するのね」
「私は専属っていうわけではないけど、十番の本屋さんで店番のバイトすることにします」
「まあ、ファッちゃんまで」
「人間の体は不便だけど、壁を登るのは楽しいよ」
「ファッションと照り焼きが好きなの」
「私は本が好きだな」
「あなたたちは猫だけど体だけは人間になっちゃったのよ、だから猫のまま人間として生きなくっちゃならなくなったのね。だからお仕事をすることはとても大切なことです。でもサンちゃんの知り合いのビニールさんはちょっと心配だから私がお店に行ってよく話を聞いておきます」
ひょうこ先生はそういうと、三人の顔を一人一人よく見ました。
「人間の世界で生きるのはとても大変なことよ、猫のあなたたちにそう簡単にできることとは思えない、でも私があなたたちのお母さんとして見守るから力一杯頑張りなさい。パンプキンの力と、サンドリヨンの美しさ、そしてファッジの知力をうまく合わせればきっとうまく行くと思います。人間にとって大切なことは力を合わせることなのよ」
三人はうなずきました。
三匹の猫が不思議なマタタビ・ゴロンゴロンで人間に姿を変えたことは驚くべきことですが、本当に驚かなくてはいけないことは、この街で起きる良い人たちを騙そうとする悪人の仕業なのです。
誰かがこの街を狙っていることなんて三人はもちろんのこと、ひょうこ先生も知るわけがありません。
麻布十番商店街の平和を守るために人間に姿を変えた三匹の猫たちが活躍することになる事を、みんなが知るのはもう少し後の話です。
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