03 パンプキン、なんでもかんでも扉を開けすぎ
麻布十番キャット三銃士~第3回
パンプキンは、扉があるとどうしても開けてその向こうに行ってみたい衝動に駆られます。
ネコだからしょうがないといえば、そうですが人間の姿をしてそれをすると周りからは不思議がられてしまうでしょう。麻布十番にはお店がたくさんありますし、パンプキンは引き戸が好きなので、引き戸の店を見つけると片っ端から扉を開けて入ります。
買い物が目的ではありませんから、ただ扉を開けることが嬉しくてお店の中に入ってもすぐに出てきてしまいます。
文房具屋の扉を開けてパンプキンが入ってきました。
「いらっしゃいませ」
お店の人が声をかけます。
扉が開くとそれだけで嬉しいパンプキンはニコニコしています。
そしてさらにお店の奥に扉があるのを見つけると、どんどん入っていってその扉を開けました。扉を開けるとお家の人が食事をしているところでした。
お家の人も青年が満面の笑みでニコニコして扉を開けて自分の方を見ているので、思わず頭を下げて挨拶をしてしまいました。
パンプキンは、その店を出ると、今度は隣のお店の扉を開けます。開けて入ってはすぐに出てきます。
その後、10件ほどの店を出たり入ったりしてパンプキンはやっと満足するとお家に向かって歩き始めました。
サンちゃん、とにかく食べ過ぎ
サンドリヨンは街に出ると何か色々な匂いがすることを感じていました。
街に漂うにおいはいろいろありますが、サンちゃんが興味のあるものはお肉の匂いです。それも鶏肉の匂いがすると、もういても立ってもいられません。その匂いが、どこからか風に乗ってしてくるのです。
匂いを頼りにどんどん進むとお弁当屋さんがありました。
「ぎん香」と看板に書いてあるお店から鶏肉のいい匂いがします。
お店の前にサンちゃんが立ち尽くしていると、お店の人が声をかけました。
「いらっしゃいませ」
「私、それ、食べて良いのかしら」
「もちろんですよ、幾つ差し上げましょう」
「全部ください」
お店の人はびっくりしたような顔をしましたが、焼きあがったばかりの鶏の照り焼きを袋に詰めました。
サンちゃんは嬉しそうにそれを受け取り、口に入れるとその場でパクパクと食べてしまいました。
ニッコリ笑ってお辞儀をして今きた道を戻っていきます。
「毎度アリー、でもお勘定はまだですけど」
「今の女の人すごい美人だったけど、どこかのセレブ。それとも女優さんかしら、とても綺麗だったものね、お金払ってもらってないけど大丈夫かしら」
「女優さんにはよくあることよ、きっとマネージャーさんが後で払いにくるから大丈夫」
お店の人は、サンちゃんの後ろ姿を見送りながらそう話しました。
サンちゃんはその後、お店を何軒か回って焼き鳥や肉団子を食べると、お金は払わないでお家に向かって帰って行きます。
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