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20 パンプキン支配人になる(前編)

麻布十番キャット三銃士~第20回

パンプキンは、イラストレータの右脳アキラの紹介で六本木のクラブ・ローズの用心棒をして、警察騒ぎになってしまいました。ひょうこ先生もパンプキンには、この仕事はさせられないと言って、断固断っています。

この話を聞いた右脳マダムは、大変恐縮してパンプキンにもっと良い仕事を紹介することにしました。すな子ちゃんにも優しい好青年にふさわしい仕事をするべきだと思ったのです。ただ、人間と違ってパンプキンのしたい仕事は扉の前での行ったり来たりです。世の中にそんな仕事があるのでしょうか。

マダムはひょうこ先生の病院を訪れるとこう言いました。
「先日は、うちの右脳が変な仕事を紹介して失礼いたしました。お詫びに私がしっかりとした仕事を探してまいりました」

「とんでもございません、うちのパンちゃんが仕事の内容も分からないまま、お客さんを投げ飛ばしてしまったようで、こちらこそご迷惑をおかけしました」

ひょうこ先生も恐縮するのですが、ひょうこ先生にしたら、パンプキンに何か仕事をしてもらうよりも、何もしないで居てもらった方が心配しないでいいのでずっと楽だと思っています。でも周りの人たちは、パンプキンが仕事を探していると思っているので、仕事はさせたくないとも言えません。

「パンプキンさんのお仕事なんですが、ご希望に沿ったぴったりの仕事があって、ぜひご紹介させていただきたいと思って、本日は参りました」

「ありがとうございます、ご希望と言ってもあの子の希望はドアを開けたり閉めたり、いえ閉めたりはしないのですが、開けたり開けたり、行ったり来たりなんです」

「そう伺っています、ですのでホテルのドアマンなどはいかがでしょう。ちょうど私の知り合いがこの近くのホテルで働いておりまして、ドアマンを探しているというのです」

「ドアマンですか」

「高級ホテルですし、職場としては問題ないかと、英語もおできになるのですから、ぴったりだと思います」

「英語ですか、どうなんでしょう。第一、そんな高級ホテルでパンプキンが務まるのでしょうか」

「面接があって、それに合格すれば大丈夫。それに私が推薦しますのできっと採用されると思います」

ひょうこ先生も、そこまで言われると断れません。

「まあ、面接なら受けるだけ受けてもいいかもしれませんね」

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パンプキンはマダムと一緒にホテルに向かいました。ホテルの採用面接係はマダムの知り合いです。

「こちらがパンプキンさん。私は絶対お勧めです」

「こんにちは僕はパンキンです。僕は絶対にお勧めです」

「あっ、初めまして。パンプキンさんはアメリカの大学にお通いだと聞いていますが、どちらの大学ですか」

「はい、アメリカの大学です」

「で、どちらの大学ですか」

「アメリカの大学です」
パンプキンは澄んだ目で答えました。

「うっ、わかりました大丈夫です。英語は大丈夫だと聞いていますが」

「英語は大丈夫です」

「では、フランス語などはいかがですか」

「フランス語などは大丈夫です」

「スペイン語はいかがでしょう」

「私は、いつも大丈夫です」

「なるほど、語学には明るいということですね」

「みんなからも、『明るいね』と言われます」

「はい結構です、面接を終わります」

面接係員は天井をじっと見つめた後、思い切ったように言いました。
「右脳様、ご紹介ありがとうございました。採用させていただきたいと思います。ドアマンとしてのお仕事ですがよろしいですか」

「ああよかった、合格ですね」
右脳マダムは、ほっとしたように言いました。

「私はいつも大丈夫です」
パンプキンは、ファッジから教わった決め台詞を使いました。(後編につづく)

(南部和也)

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