PICK UP企画麻布十番キャット三銃士

01 ひょうこ先生と三匹の猫

麻布十番キャット三銃士~第1回「はじめに」

東京の麻布十番に猫を専門に診療する女性獣医師がいます。
彼女の名前は、山野辺彪子(やまのべあやこ)、近所の患者さん達からは、ひょうこ先生と呼ばれている獣医さんです。彼女の夫は山野辺兵庫(やまのべひょうご)といいます。ひょうこ先生と同じく獣医師ですが今は世界一周の旅に行ってしまって十番にはいません。

ひようこ先生には一人娘がいます。
若い頃から英国暮らしをしているため、日本語が少し変なのですが英語は達者で少しウェールズ訛りの言葉で話します。今は沖縄の研究所でイカの神経について研究しています。

ひょうこ先生は、三匹の猫を飼っています、オス猫のパンプキン、と二人の娘猫フアッジとサンドリヨンです。

パンプキンは、筑波山の農家で三人兄弟として生まれました。
三人の男の子たちは大きなビニールハウスの中でお母さんと春まで過ごしてその後、東京に連れてこられたのです。そして東中野のちゃんこ鍋屋「白星」さんへ、もらわれていきました。そのうちの一匹がパンプキンです。兄弟の中では一番小さかったのですが、いつも機嫌のいい子猫で喉を鳴らしてはひょうこ先生の後をついてまわります。

ファッジは三人兄弟で千葉県館山の漁師さんの納屋にやってきたところを拾われました。
中野のサーファーが東京に連れてきて、その人が三匹をひょうこ先生に引き渡したのです。その中で一番小さい子がファッジでした。痩せていて毛並みも悪くお目目だけがまん丸でフクロウのように見えました。「きっと頭のいい猫になるでしょう」ひょうこ先生はそう思いました。

目がまん丸でフクロウのようなファッジ

サンドリヨンは代々木のマンションで生まれた子です。
お父さん猫とお母さん猫は京都のお寺に住む猫でバンビさんというデザイナーが住職さんからもらって東京へ連れてきました。そこで生まれた二匹の子猫のうち、少しシャイな一匹をひょうこ先生がもらい飼うことになりました。

その後三匹は、ひょうこ先生の病院でスクスク育ち二歳になりました。人間で言えば二十代の元気盛りの若者です。

パンプキンは明るい茶色の、どこでも這い上がる力強い上半身を持つオス猫に育ちました。
重い扉でも器用に開けてしまう怪力猫です。閉まっている扉を開ける事が好きで、扉を開けても閉めません。とにかく目的もなく家中の扉を開けて回るのです。高い声でなく猫で、見た目とイメージが合いません。

明るい茶色の怪力猫パンプキン

ファッジは好奇心が強くてお利口な猫になりました。
でももう大人猫なのに子供のように小さいのです、目がまん丸で何にでも興味を持ちます。とにかく始めて見るものは匂いを嗅いでそれが何であるか確かめようとします。お肉よりもお魚が好きで、毛並みはシルクのようにツヤツヤです。

サンドリヨンはお腹と胸が白いグレーの色をした猫です。
凛とした顔つきでとても美猫になりました。ジャンプが得意で驚くほど高く跳び上がる事ができます。そして、食べるとなると際限なく食べる大食いなのです。特に鶏肉が好きで食べ始めると止まらなくなります。何が何でも食べる姿勢は鬼気迫るものがあり、隣で食べているファッジもパンプキンも食べるのをやめて見入ってしまうほどなのです。

凛とした顔つきで美猫のサンドリヨン

三匹の猫たちと暮らしているひょうこ先生に世界一周の旅に出ている夫、山野辺兵庫からアフリカ土産がどどきました。それはアフリカの奥地に自生するというマタタビの実「ゴロンゴロン」でした。なんの説明もなく送られてきたマタタビを引き出しにしまっておいた、ひょうこ先生は、いつしかその存在すら忘れてしまっていました。

ある朝、ひょうこ先生が起きてくるとキッチンのテーブルに三人の見慣れない若者たちがいることに気が付きます。三人は、パンプキンと、ファッジとサンドリヨンが人間に変わった姿だったのです。三匹は「ゴロンゴロン」の香りを嗅いだことにより人間の若者の姿になってしまったようなのです。

(南部和也)

麻布十番キャット三銃士 第2回「見た目は人間」

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