カウンセラーになりたい企画

「開業してすぐ風俗関係者にインタビューする」の巻

風俗店に”別の目的”で通いつめる男性たち

小難しいお話が続きましたので、開業当時のことをお話ししましょう。思い出話にお付き合いください。
私が札幌の姉妹都市ポートランド市から戻り、カウンセリングオフィスを開設したのは1996(平成8)年の春でした。ワンルームの一室を借りただけのオープン。宣伝も何もしていないのでクライエントさんが来るはずもなく、専門学校の非常勤講師をしながら生計を立てていました。

ある日のこと、大人の男性向け“エッチな雑誌”を作っている女性カメラマンと話していて、不思議な話を聞きました(彼女は心理学に興味があって、私が開催していた社会人向けのコミュニケーション講座を受講してくれていました)。男性は風俗産業のことをご存じでしょうけれど、女性には未知なる世界。それでも、「エッチなことをする場所」であるという認識はあると思います。そうした場所であるにもかかわらず、違う目的で通いつめる男性たちがいるというのです。女性の腕枕の中で、ただ会社や家族の愚痴を吐き出して帰るだけの男性が増加している!これは驚きでした。

当時、うちのカウンセリングルームに来られるクライエントの8割が女性でした。では男性はどこで心の内を吐露しているのか?と、疑問に思ったので調べてみました。すると、クラブやスナックのママがカウンセラーの役割をしていると知りました。“男らしく”あらねばならないあの頃は、男性がアルコールを飲まずに誰かに相談することなど想像もつかないことだったのでしょう。

思い返してみると、「心理カウンセラーです」と名刺を差し出すと「ねぇ、今ぼくの考えていることがわかる?」ときまって尋ねられたものです。「心理学=心を読む学問」のようにとらえられていたのです。「カウンセリング」すらなじみがないのですから、専門家にお金を出してまで悩みを聴いてもらう、という慣習そのものもありません。地方自治体が市役所などに開設している人生相談窓口や、ボランティアスタッフによる電話相談があるくらいでした。カウンセラーやセラピストなどの相談業が職業として確立するのは、2003(平成15)年前後ですから、もう少し後の話になります。

ホンネをはき出せない男性たちの悲しい現実

その女性記者に頼み込み、取材に同行させてもらうことになりました。「人妻専門ファッションヘルス」にジャンル分けされる風俗店の他、3件の風俗店を回りインタビューしました。最初に取材した“人妻”は35歳、女優の黒木瞳に似ています。この人なら優しく聴いてもらえそう、そんな雰囲気のある女性でした。その人がすぐに教えてくれました、「1カ月に8人の指名がある」と。もちろんエッチなことをするための指名ではなく、ただ話して帰るだけの指名が、です。そして、彼女を指名するお客様が月に何回通い、さらにススキノ中の風俗店を調べたら、どれだけの数の男性たちがそこで話しているのでしょう。守秘義務も徹底されないそのような場所でしか、ホンネをはき出せない男たちの現実を悲しく思いました。

よし!男性がカウンセリングに抵抗があり通ってこないのであれば、こちらから出向こう!企業と契約しよう!会社の保健室を借りられれば、空いた時間に社員が相談に来てくれるかもしれない。そう考えて、産業カウンセラーとしての活動を始めたのです。

ここで男女の大きな差を感じることになりました。女性の場合は、あらゆる友人に悩みを打ち明けています。それでも解決しないので、カウンセリングを受けにやってきます。でも男性はというと、心の病になる少し手前のぎりぎりまで、他人には相談しません。責任感があり、がまん強いような“男らしい”人ほど、その傾向が強かったです。誰に相談しても、結局は自分で解決するものだからという理由です。ただ、少しだけ現実逃避をしたくて、スナックや風俗店に通う、そんな印象でした。

現代ではもうそのような男女差はありません。ジェンダーレスはカウンセリングにおいても同じで、男性も進んでカウンセリングを受けに来てくれます。メンタルヘルスという言葉も定着し、モチベーションの低下が組織の生産性を下げるもの、という考えが職場に浸透したおかげでもあります。

そうそう、黒木瞳以外の他の3件のファッションヘルスはどうだったのか、お話ししていませんでしたね。年齢は28歳、24歳、20歳のヘルス嬢さんと会いました。まあ‥相談してもよいかな、と思わないでもなかったのは28歳の女性くらいです。あとの2人は男性からもらった名刺を”うちわ”代わりに仰ぐわ、噂話はするわでひどいものでした(苦笑)。改めて守秘義務が大切であることを考えさせられた経験でもありました。

(神田裕子)

パートナーが発達障害かも?と思ったときに読む本

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