カウンセラーになりたい企画

カウンセリングに来る人たち

どんな相談内容が多い? という困った質問(-_-;)


「神田さんのところのカウンセリングってどんな相談内容が多いの?」と尋ねられるといつも返答に困ります。「人間に関わることすべてです」と答えるようにしていますが、確かにそうなのです。

例えば、うつ病や適応障害などの精神疾患の背景となった問題に向き合うために来所される方もいれば、7年間付き合っていた彼氏に二股かけられていたと言って泣いて訪れる女性もいます。長いこと単身赴任をしていて、久しぶりにわが家へ帰っても、夫婦関係が冷めきっているため、居場所がないと途方に暮れる人もいます。職場の同僚から嫌がらせを受けているけれど、それを相談しても上司が味方になってくれないという話や、育児と仕事の両立が厳しいことから退職しようかどうしようかと迷う社員など、相談領域は多岐にわたります。そのような相談にどのように対応していくのでしょう。

コーチングやアサーティブトレーニングとの違い

カウンセリングと同じようなコミュニケーションスキルに、コーチングやアサーティブトレーニングがあります。原則、コーチングは信頼関係ができているところからスタートします(だって、こんな人のアドバイスは受けたくない!という人に定期的にコーチングをしてもらうのは苦痛‥)。そしてプレイヤー自身が目標とするゴールを定め、そこに到達する道順や手段をプレイヤー自らが決められるようサポートしていきます。

基本的に、プレイヤーが潜在的に持っている能力を信じているという点では、カウンセリングと同じです。違うのは、カウンセリングの場合は突然、見ず知らずのクライエントが来られるという点です。どんな人がどのような思いで来所されても、まずは受容が優先され気持ちに寄り添うことが重要です。

アサーティブトレーニング(訳:自己主張訓練)は、アメリカの行動療法から枝分かれした自己表現法です。意見や感情など、心の内側を表出しにくい人を対象に、自己主張できるよう練習していきます。アサーティブトレーニングのバックグラウンドは、「心にも基本的人権がある」という理論です。日本では「自己主張」と聞くと、どうしても「わがまま」と混同されがちです。しかし、アサーティブトレーニングでは、まずアイデンティティ(自我の同一性)を大切にすることが最優先であり、そのうえで他者も尊重しようとする相互尊重の概念になります。

カウンセリングの臨床の場では、相談内容に合わせてコーチングやアサーションの手法を組み入れながら問題解決に向かいます。

カウンセラーとの相性の見分け方

では、あなたにストレスフルなできごとが起きたら、どうやって私にたどり着くことができるでしょうか?
一番は「紹介」です。信頼できる人が勧めてくれるなら安心でしょう。次にあなたは、私がどのくらい経験のある人か、どういう経歴からカウンセラーになったのか、に興味を持つことになります。そこはインターネット時代です。「神田裕子&カウンセラー」等で検索すると、膨大なデータが出てきます。それらの資料から具体的にいくらの予算で、時間はどれくらいかかり、どんな手法でカウンセリングが行われるのか、という疑問への答えも同時に見つかることになるでしょう。それでも、まだあなたは不安です。

そう、カウンセラーはどんな人柄なのか(相性は合うのか)が、最後の関門です。私は、「相手の人柄はどうしたらわかるものか?」と質問されたら、その人の言葉によって書かれたものを読むように言います。動画も一つの手段ですが、実は文章のみの方がその人の知性に基づいた能力や信念、性格がリアルに表れやすいと考えています。代表的なものがブログやSNSです。例えば、ツイッターは140文字の中に伝えたいことをいかに凝縮して書くか、が問われます。話が横道に逸れますが、個人的に興味をもって拝読しているのが、辻仁成さんの「父ちゃん」視点でのツイートです。やさしさが溢れていて癒されます。

専門用語ばかりを使って、小難しくだらだらと書いている人も避けたいものです。何を言いたいのか、要点がしだいにずれていってわかりにくいです。中には“ええかっこしい”で自己顕示欲にまみれた文章もあります。カウンセラーがクライエントを受けとめる際、自分に正直であることが求められます。心をオープンにすることが要求される仕事であるのに、過大評価・過小評価を含め等身大でいられない人には注意が必要です。小手先の情報や専門用語をいくつか並べれば、ある程度は“それらしく”見えるでしょう。でも「行間を読みとる」ように追っていくと、書き手の人生哲学や性格が垣間見られます。

「できる・できない」を明確にしているカウンセラーであることも重要です。カウンセラーはオールマイティではありません。自分がどのような手法を使用しているかを明らかにすると同時に、その限界を知っていることが重要です。医師や弁護士、その他の専門家と連携していることが必要でしょう。「絶対にあなたの症状を治します!」という誇大広告は詐欺に該当するため、このようなカウンセラーは避けます。

相談者が答えを見つけるまで寄り添うのがカウンセリング

冒頭に、カウンセリングを受けたいクライエントにとって、「紹介」が容易な方法であることを申し上げましたが、これからカウンセラーを仕事にしたい!という人にとって、実はこれが一番の大きな障壁となります。実績も経験もないのですから、何を根拠に誰が紹介してくれるというのでしょう。友達だけでは限界があります。このことについては、また別の機会にカウンセラーとして売り出すために、という内容でお話ししましょう。

どのような悩みを打ち明けられても、目の前にいるクライエントが答えを見つけるまで、寄り添い続けるのがカウンセリングです。一度お引き受けしたら、逃げるわけにはいきません。最初から、人生の明確な目標を持っているクライエントなんていませんから、彼らの身にどんなできごとが起こり、何に戸惑っているのかを整理するのが第一歩になります。

そうして歩むプロセスにおいて、クライエントが何かしらのことに気づき、行動変容へつながることがカウンセリングの目標となります。30年以上もカウンセリングをしていると、びっくりするような話もたくさん拝聴しました。人間の生死に触れることがありました。地位や名誉、お金があっても幸せではないことを教えていただきました。

クライエントを「どんな枠にもはめずに受けとめる」と腹をくくった人間にだけ許される、不可思議な心のフィールドで私は仕事をしています。

(神田裕子)

パートナーが発達障害かも?と思ったときに読む本

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