二極化時代の勝ち組企業を探す!
『2022年版 業界地図』(税込1320円 プレジデント社)が、8月中旬から全国の書店に並んでいます。特集は「二極化時代の勝ち組企業を探す」です。
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、経済や企業活動は一斉に停滞・落ち込みましたが、回復に要する時間は企業間でバラバラなのは明白です。石油ショックやバブル経済崩壊、リーマン・ショックなど大きな事象後に見られる傾向です。企業間格差があるのは当然のこと。コロナ禍からの回復スピードによっては、「勝ち組企業」と「負け組企業」の差はさらに広がることでしょう。
特集のトップは「脱炭素」への対応が迫られているに石油業界です。同業界は、中東などから原油を調達し、ガソリンや軽油などに精製・販売する「元売」や「ガソリンスタンド(GS、業界内ではサービスステーションの呼称を使うことが多い)」などで構成されています。GSは元売系列と独立資本に分かれます。
マイカーの普及とともに、長期間にわたって〝儲け〟を享受できた業界です。元売社員の平均年収は高く、GSはフランチャイズ(FC)で起業家の受け皿になった時期もあります(「エッソ」ブランドなど)。ガソリンの販売が落ち込むといって、GSの地下に設置してあるタンクにいつまでも残っているわけではありません。アパレルなどと違って、陳腐化による不良在庫問題は事実上ないのです。経営者が不在でも、販売は容易です。「平日のゴルフ場でプレイしているのはGSの社長だけ」といった噂が聞こえたりしましたが、まったくの作り話ではなかったはずです。
脱炭素を突き詰めれば、石油会社が石油会社でなくなるということです。元売やGSは「酸素ステーション」や「EVステーション」に業態を変更させていくのでしょうか? 秘策も見たいものです。「脱炭素と石油(原油)」に関しては、さらに大きなテーマを抱えることになります。場合によっては、米国(USドル)を中心に動いている世界の政治・経済体制が一変する可能性があります。
反米国家などに対する経済措置を発動すると、対象となった国や人物が米国の民間金融機関に預けている資産は凍結されます。当該国や人物は経済的に大きな痛手を被ります。
米国は基軸通貨になっているUSドルを武器代わりに活用するわけですが、大本は原油取引の決済通貨がUSドルであるからです。「金本位制」から「石油本位制」への移行といっていいでしょう。軍事力とUSドルの力を背景に、米国は世界の政治・経済のリーダー役を担ってきたといえるでしょう。
脱炭素化にともなう原油取引量の減少で、USドルの価値が下がったりすれば(たとえば、1USドル=100円が、50円や30円になる)、世界のパワーバランスはどうなるのでしょうか。暗号資産(仮想通貨)や中国元などが、USドルの役割を奪う時代は到来するのでしょうか?
図表や数字が中心の『2022年版 業界地図』ですが、仮説を立てたり未来図を読むための参考になるとしたら幸いです。