楽天グループの「貸借対照表(バランスシート)」の推移を確認してみよう!
バランスシート(BS)、損益計算書(PL)、キャシュフロー(CF)計算書を「財務三票」といいます。企業の経営成績を様々な角度から示す、重要な3つの決算書類です。
BSでは、会社の資産や負債状況、会社設立からの利益の積上状況が確認できます。
資産に計上される現金は、CF計算書の数値が反映されます。
資本の部はPLの影響を受けます。
当然のことですが、BS、PL、CF決算書は、連動しているのです。ここでは、楽天グループのBSを見ておきましょう。
ネット企業の先駆者として「効率よく稼ぐ企業」を実現してきた楽天グループがここにきて、苦戦を強いられています。携帯キャリア事業に参入したことが最大の要因です。図表は楽天グループのBSの推移です。いうまでもありませんが、図表下に示した総資産は、企業規模の目安を示す指標です。
2018年6月期は6兆6500億円。2019年6月期は8兆358億円になり、23年6月期は21兆6480億円でした。5年間で3倍を超える拡大です。BSには「資産=負債+資本」という決まりごとがあります。資産が増えれば、「負債+資本」も増える。その逆もあり得るわけです。楽天グループで目立つのは、資産に計上されている「有形固定資産」が急激に伸びていることです。有形固定資産は、機械設備、工具、器具、土地などの資産規模(帳簿価額)を示す。
同グループは、20年4月に携帯電話運営事業に本格参入。それまでは他社通信回線利用の格安携帯サービスを手掛けていましたが、NTTドコモやソフトバンク、KDDIに次ぐ第4のキャリアとして、自前の基地局整備を本格化させました。基地局整備などにともなう投資額は1兆円を突破。それらが有形固定資産として積み上がってきました。23年も3000億円の投資を予定しています。
資産の伸びと連動しているのが負債の増額です。つまり、1兆円を超す新規投資の原資は借金。いわゆる、有利子負債です。金融機関からの新規借入や社債発行にともなう調達で賄ってきたのです。18年6月期の有利子負債1兆1400億円は、23年6月期には1兆7782億円まで膨らんでいます。
一方、減少したのが、資本の部の利益剰余金、いわゆる内部留保です。創業から19年6月期までに積み増してきた利益剰余金は5796億円でした。それを吐き出し、23年6月期は4378億円の赤字に転落しています。損益を計算するPLで多額の赤字を計上したことで、利益剰余金を食いつぶしたといえるでしょう。
楽天銀行を23年4月に上場。楽天証券ホールディングスも上場予定です。グループ企業の新規上場で、新規の資金を調達した(する)わけです。
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