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副業をする際に注意したいこと

副業をする人が増えています。(株)リクルート社の「兼業・副業に関する動向調査データ集2021」によると、現在副業をしている人は9.4%、今後実施の意向ありの人が46.5%という結果です。回答者のうち実に半数以上の方が、副業をしていたり、前向きに考えているということです。

国も副業を推進する立場をとっていますので、今後ますます副業をする労働者は増えてくることが予想できます。そこで、今回は副業をする際に注意することとして、主に社会保険の観点から、パターン別に解説します。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本』
(1)正社員+正社員

正社員として働きつつ、別の会社でも正社員として働くパターン。あまり多くない働き方だと思いますが、最近は短時間正社員という雇用形態もあり、例えば、週3日の正社員という働き方もあるため、選択肢としては考えられます。

このパターンで注意する点は、大企業で副業する場合の社会保険のダブル加入の可能性です。社会保険(健康保険・厚生年金)は、通常の正社員の3/4以上の所定労働時間であれば加入する必要があります。そのため、通常の正社員が週40時間の所定労働時間の場合、30時間以上働くと社会保険に強制加入となります。

しかし、法改正により、今年10月から101人以上の会社では、所定労働時間が週20時間以上30時間未満の方も社会保険に加入する必要があります

そのため、A社で週3日正社員、B社で週3日正社員という働き方であっても、両会社が101人以上の大企業であれば、社会保険へダブル加入することも可能性としてあるのです。

ダブル加入した場合、健康保険証は1枚しか持てないため、A社かB社かどちらかを選択しなければなりません。また、保険料はA社とB社の給料を合算した額をベースに保険料が決定されます。その保険料をA社、B社の給料額を按分した割合で各社での保険料が算出され、その額が毎月の給料から控除される仕組みとなっています。

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(2)正社員+パート

このパターンは比較的多いのではないでしょうか。このパターンで注意することは、(1)と同様、社会保険のダブル加入の可能性です。

パートやアルバイトといった雇用形態に関わらず、条件を満たした場合、社会保険には強制加入となります。そのため、「副業がパートだから」という理由で社会保険の加入を免れることはできません。パートでの副業でも労働時間が長くなれば社会保険の加入の可能性もありますのでご注意下さい。

(3)正社員+個人事業

これは業務委託型と言われるパターンです。副業先においては業務委託契約(請負契約)を結び、その契約に基づいて業務提供を行うという副業形態です。働き方の程度によって、フリーランス、ギグワーカー、個人事業主などと呼ばれます。

(1)や(2)のように雇用契約ではないため、このパターンでは、労働基準法などの労働関係諸法令が適用されません。そのため、副業として行っている業務については労働者としての保護は受けられないことになります。例えば、労働者であれば業務上の怪我は労災保険の対象となり国から保険給付を受けられますが、副業での作業中に怪我をしても何も補償はありません。

少し前に、フードデリバリーの配達員の配達中での事故についてのニュースもありましたが、まさに、雇用なのか業務委託なのか、という点が問題になったわけです。このパターンで副業をする場合には、副業先との契約内容を理解した上で、副業は全て自己責任、という認識をもつことが必要です。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本』
(4)パート+パート

複数の会社でパートとして働いている方もいるでしょう。それがこのパターンです。このパターンの方は、「配偶者の扶養のまま働きたい」というニーズが多いと思われます。そのため、各会社では所得税や社会保険の関係で、年収103万円、年収130万円等の「壁」を意識して働いているのではないでしょうか。

ただ、このパターンで注意することは、やはり社会保険の加入です。繰り返しになりますが、パートであっても条件を満たすと自らが社会保険に強制加入となり、配偶者の扶養から外れることになります。

社会保険の場合、原則、年収130万円未満であれば扶養の範囲となりますが、複数社で働きつつ年収を130万円未満に抑えていても、ある会社での所定労働時間が週30時間や20時間を超えている場合等は、前述のとおり社会保険への加入する必要があります。そのため、収入面だけでなく労働時間の観点からも、働き方を選択する必要がありますのでご注意ください。

以上、4つのパターンについて主に社会保険の観点から注意すべきことを解説しました。副業をする際には参考にしてください。

(三谷文夫)

労務管理の基本がぜんぶわかる本(ワンパブリッシング)

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