企業業界地図

ビール4社は2010年からどう成長したか?

ビール業界の状況が一変したのは2001年だ。1954年以来トップシェアを維持し、ピーク時には63・8%(1976年)という圧倒的な占有率を誇ったキリンビールをアサヒビールが逆転した。以後、アサヒグループの「スーパードライ」がビールの代名詞となり現在に至る。その間、税率が安価な発泡酒や第三のビールが普及。成立には至らなかったが、サントリーとキリンの経営統合が話題になったこともある。

現在、4社はいずれも持株会社を頂点にグループを組む。持株会社体制に移行したのはサッポロが2003年、キリンが2007年、サントリーが2009年、アサヒが2011年である。

2010年12月期と2021年12月期の4グループの売上高は、サントリーホールディングス(HD)、アサヒグループHD、サッポロHDが伸長。唯一、キリンHDがダウンである。2010年キリン、サントリー、アサヒの順だったが、21年はサントリーとアサヒがトップを競い、キリンは3位に転落した。『2023年版 図解業界地図(プレジデント社)』で詳しく触れているが、大きな要因は企業買収の巧拙にある。

10年余で変わらぬものは営業利益率だ。サントリーとアサヒ、サッポロが上向き傾向にあるとはいえ、かりに缶ビールを100円で販売したとして、各社が獲得する利益は10円に満たない。「販促広告宣伝費」は減少傾向だ。卸や特約店などへの販売奨励金の支払いを抑制しているためだろう。

上位4社の従業員年収の推移にも迫ってみた

単体ベース(持株会社)の従業員平均給与は、サントリーとアサヒが上昇、キリンとサッポロがダウンである。アサヒグループHDは約235万円の増額である。持株会社体制に移行(11年7月)したことで、平均年収算出の対象人数が減少したことも大幅増額の要因だ。それでも、持株会社として最初の開示(11年12月期1014万円)からでも、100万円を超えるアップである。

■ビール4社の概要
■サントリーHD10年12月期21年12月期
売上高1兆7426億円2兆5592億円
営業利益率6.1%9.6%
販促宣伝広告費4148億円3786億円
グループ従業員2万5103人4万275人
単体従業員466人482人
単体従業員平均給与962.2万円1140万円
■アサヒグループHD10年12月期21年12月期
売上高1兆4894億円2兆2360億円
営業利益率6.4%9.4%
販促宣伝広告費2200億円1850億円
グループ従業員1万6712人3万20人
単体従業員3576人336人
単体従業員平均給与879.5万円1114.6万円
■キリンHD10年12月期21年12月期
売上高2兆1778億円1兆8215億円
営業利益率6.9%3.7%
販促宣伝広告費2213億円1630億円
グループ従業員3万1966人2万9515人
単体従業員275人1156人
単体従業員平均給与979.8万円870.9万円
■サッポロHD10年12月期21年12月期
売上高3892億円4371億円
営業利益率3.9%5.0%
グループ従業員3983人6872人
単体従業員66人116人
単体従業員平均給与887.1万円835.8万円

(鎌田正文)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です