5大商社のキャッシュベースの経営状況は?
三菱商事(8058)、三井物産(8031)、住友商事(8053)、伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)の5大商社のこれからを見るうえで、キャッシュの流れにも注目したいものです。
具体的には、営業活動でのキャッシュの入金(営業活動によるキャッシュフロー)と、投資活動での出金(投資活動によるキャッシュフロー)のバランスです。営業活動でのキャッシュの入金は、本業でどれだけの入金があったのか(いくらのキャッシュを創出したか)を示したいます。商品売上やサービスの提供で得たキャッシュから、仕入代や人件費、税金などを引いたものです。黒字が大前提です。
投資活動でのキャッシュの出金は、企業の買収や設備投資に投じたキャッシュです。正確にいえば、子会社や工場、有価証券の売却などにともなう入金との差額を計算しますが、入金より出金が多い「△=出金超」が一般的です。投資活動でのキャッシュの出金超額が多いとということは、大型の投資をしているということで、今後の成長に大きくかかわってきます。投資がうまくいけば、成長が期待できます。投資に失敗すれば、東芝のようになります。営業活動でのキャッシュの入金が、投資活動でのキャッシュの出金を上回っているのは、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事の3社です。
「13年3月期~17年3月期」の5期累計を年平均に均せば、三菱商事はおよそ2000億円、住友商事は約1300億円、伊藤忠商事は1000億円の入金超です。三井物産と丸紅は、入金と出金がほぼイーブンと見ていいでしょう。入金ベースを考慮して出金を抑制する――各社ともキャッシュフロー経営重視ということですが、将来的な成長には大型の投資(出金)が欠かせないのも事実です。
たとえば、伊藤忠商事は16年3月期に限れば、営業活動による入金4194億円に対して、投資活動による出金が5572億円で、入金より出金が1378億円上回っていました。中国最大のコングロマリットであるCITICと15年に戦略的提携を結び、約6000億円を出資したためです。伊藤忠商事はCITICとの提携に社運をかけたともいえるわけで、中国を中心とするアジアでの協業による事業展開の加速が求められることはいうまでもありません。伊藤忠商事以外の商社が、どんな投資をしてくるか、注目しておきたいところです。
■5大商社のキャッシュの流れ(13年3月期~17年3月期の5期累計と年換算平均額。「△」は出金を示す)
【三菱商事】
・営業活動での入金:5期累計2兆9162億円(年平均5832億円)
・投資活動での出金:5期累計△1兆9298億円(年平均△3859億円)
【三井物産】
・営業活動での入金:5期累計2兆5356億円(年平均5071億円)
・投資活動での出金:5期累計△2兆5621億円(年平均△5124億円)
【住友商事】
・営業活動での入金:5期累計1兆7477億円(年平均3495億円)
・投資活動での出金:5期累計△1兆1017億円(年平均△2203億円)
【伊藤忠商事】
・営業活動での入金:5期累計1兆8773億円(年平均3754億円)
・投資活動での出金:5期累計△1兆3888億円(年平均△2777億円)
【丸紅】
・営業活動での入金:5期累計1兆3856億円(年平均2771億円)
・投資活動での出金:5期累計△1兆3589億円(年平均△2717億円)