総合商社の実力の見分け方
総合商社の実力を一目で見分ける方法がある。「受取配当金」と「持分法投資損益」を確認すればいい。あくまでも「純利益」などを含めて総合的に判断するのが基本だが、受取配当金と持分投資損益の黒字額には、各社の力量やグループの経営状況がはっきり示される。
総合商社は商品の取り扱いで手数料を得る〝仲介ビジネス〟中心から、成長が見込まれる分野や事業への投資・参画という〝投資ビジネス〟にシフト。子会社や関連会社、それに投資先から配当金や利益の還元を受けるビジネスモデルを築き上げてきた。それだけに、受取配当金と持分法投資損益は重要な指標である。
受取配当金は子会社や関連会社、出資会社などから親会社に支払われた金額を確認するために、単体ベースの数値を使用する。
持分法投資損益は連結決算特有のもので、関連会社の利益を投資比率に応じて取り込む。子会社の利益は基本的に合算するが、関連会社の場合は、部分的にグループ利益に貢献するわけだ。
17年3月末でいえば、三菱商事は子会社834社と関連会社440社の計1274社とグループを形成。三井物産も子会社628社、関連会社201社の計829社を牽引。住友商事、伊藤忠商事、丸紅の3社がそれぞれ率いている子会社と関連会社の合計は、950社、764社、438社である。
単年度における変動も重要だが、ここでは13年3月期~17年3月期の5期について平均した数値で見てみよう。
受取配当金の年換算平均額は、4084億円の三菱商事がトップ。以下、三井物産3556億円、住友商事1766億円、伊藤忠商事1762億円、丸紅が1540億円と続いている。
各社とも海外子会社などからの配当金がかなりの部分を占めると思われるが、馴染みのある主な日本企業からの配当金を見てみよう。所有株数と1株配当金で推定してみた。
三菱商事が、子会社の三菱食品から5期合計で受け取った配当金はおよそ80億円であり、年平均にすれば16億円である。出資しているいすゞ自動車からも年平均で14億円弱の配当金を受け取っている計算になる。
三井物産はセブン&アイHD、トヨタ自動車、三井化学に出資しており、それぞれからの年平均受取配当金は、12・3億円、6・5億円、2・5億円である。
住友商事は、年平均で山崎製パンから1・5億円、住友不動産からは1・1億円の配当金を得ているほか、トヨタ自動車からも年平均で5・8億円ほどあった計算になる。
伊藤忠商事の年平均配当金収入は、子会社の伊藤忠エネクスからは13・9億円、同じく子会社の伊藤忠食品からは4・6億円、出資先のいすゞ自動車からは11・5億円だ。
丸紅の場合は、出資先であるイオンと山崎製パンから年平均で、それぞれ1・4億円前後の配当金があったと推定される。三菱商事や伊藤忠商事に比べれば少ないもののいすゞ自動車の株式を所有しており、年平均配当金は9500万円と推定される。
持分法投資損益の年換算平均額は受取配当金とは異なり、三井物産が1074億円でトップ。そのほかは、伊藤忠商事973億円、三菱商事964億円、丸紅837億円、住友商事624億円である。
この持分法投資損益は、持分法適用会社(関連会社)のグループへの利益貢献を示すもので、三井物産の関連会社は、QVCジャパン、東洋エンジニアリング、フィード・ワン、三井製糖、スターゼンなどである。
伊藤忠商事の主な関連会社は、東京センチュリー、オリエントコーポレーション、ジャムコ、デサント、プリマハム、ベルシステム24HDなどだ。
三菱UFJリース、千代田化工建設、伊藤ハム米久HD、日本KFCHD、ライフコーポレーションなどを関連会社にしているのが三菱商事である。
丸紅の関連会社はエスフーズ、東洋精糖、日清オイリオグループ、東武ストアなど。三井住友ファイナンス&リース、ジュピターテレコム、日新製糖などは、住友商事の関連会社である。
原則として、50%超の株式を所有して場合は子会社として扱うのに対し、20%以上50%以下の株式を所有している企業については関連会社とするが、伊藤忠商事と丸紅が50%ずつ出資をしている鉄鋼商社の伊藤忠丸紅鉄鋼のように、複数企業の関連会社に該当するケースもある。伊藤忠丸紅鉄鋼の利益の取り込みは、伊藤忠商事と丸紅が50%対50%の折半である。
受取配当金や持分法投資損益などを反映した純利益は、年平均額が多い順に伊藤忠商事2966億円、三菱商事2752億円、三井物産2351億円、丸紅1328億円、住友商事1255億円である。
受取配当金や持分法投資損益で他社に先んじる三菱商事と三井物産の2社は、16年3月期に資源価格の下落で赤字に転落。一方、非資源ビジネスが中心の伊藤忠商事は黒字を継続したことが、5期平均にも示された形だ。